2023年5月、関西電力と中部電力、沖縄電力を除く大手電力会社7社の電気料金の値上げ申請を経済産業省に認可し、6月に値上げが実施されました。東北電力の一般向けの電気料金は24%の値上げが行われました。しかし、電気は誰もが使うライフラインであるにも関わらず、値上げが適切か市民の立場から意見を述べる機会はほとんどありません。今回の電気料金値上げ申請について、東北電力から市民に向けられた説明の場は、2月16日に行われた公聴会の1回のみであり、私たちが知ることのできる情報は非常に限られています。この記事では、不透明な電気料金の中身を象徴するような「他地域の動いていない原発から0Wの電気を買い、その購入費を電気料金の中に組み込む」実態を紹介します。
値上げ申請をされた一般家庭向けである規制部門の電気料金は、「総括原価方式」によって決定されます。「総括原価方式」とは、電気の安定供給に必要と見込まれる費用に利潤を加えた額(総原価等)と電気料金の収入が等しくなるよう設定するものです。総括原価には電気の安定供給に必要な費用を全て含めるため、他地域の大手電力会社から電力を購入する場合の費用もこの中に含まれます。(※1)
しかし不可解なことに、東北電力と東京電力および北陸電力の値上げ申請の中では、他地域の稼働していない原子力発電所から電力を購入するための費用が、総括原価の中に組み込まれているのです。他社から原子力の電気を調達する取引は下図のようになっています。東北電力は東京電力の柏崎刈羽原発1号機と福島第二原発3・4号機から、東京電力は東北電力の女川原発3号機と東通原発1号機から、相互に0Wの電力を購入し総括原価に組み込んでいることが分かります。また、稼働していない原発の電力購入費用として、原発を保有する卸電力会社である日本原子力発電株式会社にも電気料金が流れています。(※2)
0Wの電力取引であるにもかかわらず、金額は莫大です。東北電力は東京電力から0Wの原発電力を143億円かけて購入し(※3)、逆に東京電力は東北電力から0Wの原発電力を329億円で購入しています。(※4)そしてこの費用は電気料金の総括原価に組み込まれて私たち消費者が負担することになります。実際には全く電気を買っていない(0W)原発の電力購入料という形で消費者から電気料金を吸い上げ、東北電力と東京電力は利益を拡大しているのです。
一般的に考えれば、0Wの電気を買うためにこれだけの費用をかけるというのは全くおかしなことです。この記事では他社の原発電力の購入料について触れましたが、原発廃炉費用、原発関連の税金など、目には見えづらい形で私たちは原発の負担をしています。電気料金を設定するための会議は不透明であり、市民の目からは中でどんな議論がされているのかとても分かりづらく、市民が議論に参加する機会も、市民への説明の場もほとんどありません。
不透明なところだらけの電気料金値上げ申請は不当です。公正で持続可能なエネルギーシステムをつくるためには、市民が不正に対して監視の目を光らせ、積極的に声をあげていく事が不可欠です。電気料金の引き下げと料金滞納を理由に送電停止しないことを求めるこの署名もまた、より公正なエネルギーシステムをつくるための一歩です。今後ともぜひ拡散にご協力をお願いします。
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※3)資料2②特定小売供給約款の変更認可申請に係る査定方針案について (caa.go.jp)p224の購入電力料278億円から日本原電分135億円を除いた金額
※4)retail.pdf (tohoku-epco.co.jp)p42 他社電力販売料(原子力)より
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