3月3日、世界気候アクション(Global Day of Climate Action :GDCA)が行われます。
Fridays For Future Sendaiは、仙台で貧困問題に取りくむ「ライフライン無償化プロジェクト」と共同で、仙台市に「エネルギー貧困」への対応を求めるアクションを行います。
エネルギー貧困を拡大する大きな要因となっている電気料金の高騰。その電気料金の高騰は、気候危機を加速させる化石燃料へのエネルギーの依存が大きく影響しています。私たちはこのようなエネルギー貧困と気候変動を引き起こす社会を乗り越える社会政策を求め、アクションを起こします。
〇拡大する「エネルギー貧困」
現在、エネルギー価格の高騰や物価高騰の影響で、貧困が拡大しています。ライフライン無償化プロジェクトの活動現場でもあるフードバンク仙台では、物価上昇やエネルギー料金の値上げの中、食料を購入できないだけでなく、電気・ガス・水道を利用できない人/滞納している人が、相談者の2~3割に上っています。
・ガスの停止世帯は215世帯、1~3カ月の滞納世帯は約26%にあたる417世帯
・電気の停止世帯は57世帯、1~3カ月の滞納世帯は約30%にあたる441世帯
・水道の停止世帯は69世帯、1~3カ月の滞納世帯は約21%にあたる349世帯
(2022年度4~12月の食料支援総世帯数2331世帯、複数回答)
フードバンク仙台のもとには、
「電気料金の高騰により、真冬に家で暖房さえつけられず、上着を着ることでなんとかしのいでいる」 「電気代を含め、ライフラインの支払いをするために、食料や薬を諦めた」
といった相談が来ています。仙台においても、電気などのエネルギー料金を払いたくても払うことができない「エネルギー貧困」が拡大しているのです。
一般的に「エネルギー貧困」とは、「家庭内において人びとが生活するうえで必要なエネルギーサービス(冷暖房、給湯、調理用設備など)を十分に享受できない状態」のことを指します。今後値上げが続けば、寒さや暑さに耐えることができずに、健康を損なう人や、命を落とす人も出てくるでしょう。
*フードバンク仙台のもとに集まるライフラインの滞納・停止の相談については、こちらの署名サイトを参照
このような状況に対して、ライフライン無償化プロジェクトは、仙台市に対策を求めてきました。しかし、仙台市長は「忙しい」という理由で、仙台での貧困状況や、フードバンク仙台のもとに集まっている声に対して、聞く耳をもちませんでした。ライフライン無償化プロジェクトがこれまで求めてきた、価格高騰に対する市民の負担軽減等の要求は無視され、現在もまったく対策がとられていません。
*ライフライン無償化プロジェクトの活動についてはこちらを参照…https://foodbanksendai.com/news/free-lifeline-project-member/
〇電気料金はなぜ高騰しているのか
今年4月からの電気料金について、東北電力を含めた大手電力会社は、3〜4割の値上げを経産省に申請しています(東北電力は平均32.94%の値上げを申請)。今以上に値上げが行われてしまえば、私たちの生活がさらに圧迫されることは明らかです。
実際に、1か月あたりの電気代が、最近1年半で約3000円も上昇した地域もあります。
電気料金高騰の主な原因は、電気を作るための燃料価格の高騰(原油・LNG(液化天然ガス)・石炭といった化石燃料)であると言われています。では、なぜ燃料価格は高騰しているのでしょうか。
一般的な要因として、昨年開始されたロシアのウクライナ侵攻が挙げられます。これは確かに、燃料価格に大きな影響を与えました。
しかし、ウクライナ侵攻以前から、燃料価格は上昇していました。それは、「気候変動」と「脱炭素化」の影響です。「気候変動」の影響で引き起こされる豪雨のために、化石燃料の採掘・輸送に大きな遅れが生じていると報告されています(*1)。また、「脱炭素化」を求める気候正義運動・環境運動の影響を受け、世界的には化石燃料事業には投資が集まらなくなっています。そのため化石燃料の需要に対する供給が減少し、価格の高騰に大きな影響を与えています(*2)。化石燃料価格の高騰は、ウクライナ侵攻の一時的な影響ではなく、気候変動の時代に避けられないことなのです。
(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/pdf/035_03_00.pdf P22)
さらに、「投機マネー」が市場を不安定化させ、価格高騰を加速させているとも言われています(*3)。投機を行う投資家たちは、化石燃料そのものを入手するためではなく、短期間の市場価格の変動に乗じて莫大な利益を得るために、「化石燃料を買う権利」を取引しています。投機の市場規模は非常に大きく、わずかな動きが化石燃料の価格を翻弄します。利益だけを求めお金を転がすマネーゲームによっていっそう混乱した世界経済の中で、人々は暖房をつけられず、温かいお風呂に入れず、苦しい生活を送っています。
〇大手電力会社が化石燃料を使い続け、利益を上げようとしている
2022年度時点で、日本の電力の75.8%は化石燃料の火力発電によって依存しています(*4)。化石燃料価格が高騰すれば、私たちの生活に大きな影響が出ることは避けられません。ここまで見てきたように、化石燃料の価格高騰は一時的なものではなく、世界的に中長期的な傾向であり、今後も続くことが予想されます。今こそ、地域に根差した再生可能エネルギーに転換すべきではないでしょうか?
しかし、大手電力会社は、再エネ転換に努力するのではなく、化石燃料を使い続けています。電気料金を値上げし、私たち市民に負担を強いることで収益を維持・上昇させようとしているのです(*5)。
さらに、化石燃料企業は、化石燃料の価格高騰によって莫大な収益を上げました。大手電力会社が化石燃料に電源を依存している限り、どれだけ化石燃料が高騰したとしても、化石燃料企業は利益を上げることができるのです(*6)。
・INPEX 増収率:71.1%(四半期の売上高6003億円) ・ENEOSホールディングス 増収率:53.1%(四半期の売上高3兆8389億円) ・出光興産 増収率:66.8%(四半期の売上高2兆6094億円) |
さらに、化石燃料は気候変動を加速させてしまいます。今も、気候変動の影響で、世界中で多くの人々が生活を脅かされ、命を奪われています。国連のIPCCが「1.5℃特別報告書」で述べたように、急激で不可逆的な変化が起き、以前の状態に戻れなくなる地点(ポイント・オブ・ノーリターン)はもうすぐに迫っています。その可能性を少しでも減らすためには2030年までに二酸化炭素排出をほぼ半減させ、2050年までには純排出量をゼロにしなければなりません(*7)。
エネルギー貧困から人々の暮らしを守るためにも、気候危機を止めるためにも、化石燃料に依存したエネルギーシステムから一刻も早く脱却しなければなりません。
(https://cger.nies.go.jp/cgernews/2021_special/362001.html)
私たちの生活や地球環境のためのエネルギーシステムを求めよう!
現在のエネルギーシステムは、様々な側面で社会を破滅に導いています。優先されているのは地球の持続可能性でも、私たちの生活でもなく、化石燃料企業や大手電力会社の収益です。
エネルギー価格高騰への対応として、一般的に言われるのは「節約」「節電」という「個人の努力」です。しかし、不公正なエネルギーシステムに対し、「個人の努力」で対応するにはあまりに限界があります。フードバンク仙台に寄せられる相談は、その現状を物語ります。
そのうえ、一人一人の節約だけでは、持続不可能なエネルギーシステムを放置することになります。その結果、気候変動という「静かな暴力」は、世界中の人びとの生活と生態系を破壊し続けます。日本でも、台風や熱中症が増加するなど、気候変動の影響はより過激になっていくでしょう。
私たちは、「個人の努力」に我慢を強いられるのをやめ、力を合わせて社会的な対応を求めます。そして、持続可能で、誰もが当たり前の生存を保障される社会を目指します。
仙台市は、「仙台市地球温暖化対策推進計画2021-2030」において「脱炭素社会に向けた持続的で効率的なまちづくりを進める」ことを目標に掲げています。さらに、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ表明」も行っています。
今まさに、エネルギー貧困で困窮している人の生活を守るべく、そして気候危機を加速させるエネルギーシステムの変革を進めるために、仙台市として一人一人の生活への対策と分散型エネルギー導入などの気候変動対策を講じるべきではないでしょうか。
当日はこのエネルギー貧困と気候変動問題に関連した問題を訴え、社会的な対応を仙台市にも求めます。一緒に声をあげましょう!
アクション詳細
〈日時・場所〉
3月3日(金)
15:30~ @肴町公園(〒980-0803 宮城県仙台市青葉区国分町1丁目2−5) 集合、デモ前の決起集会
16:00~16:30 デモ行進(肴町公園~勾当台公園)
16:40~ @勾当台公園いこいの広場(〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町3丁目9) 集会+仙台市への申し入れ
*1) 資源エネルギー庁 エネルギー白書2022 より
日経新聞「化石燃料からの投資撤退、世界1500団体表明 5年で倍増」
化石燃料に市場の圧力一段と 「投資撤退」社債市場にも
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「経済産業省国内拡大投資タスクフォース第4階プレゼン資料」
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/ondanka_platform/kokunaitoushi/pdf/004_03_00.pdf *2)資源エネルギー庁 エネルギー白書2022 より
*3)東洋経済「原油価格高で「株価が大きく上がる業種」はどれだ」
原油がとくに投機マネーの影響を受けていると報道されているが、石炭、LNGも影響を受けていないというわけではない。
参照:経産省石炭マーケット研究会(https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20180430001.html) *4)Diamond Online「INPEX・ENEOS・出光興産…原油高で大増収、利益上方修正でも「減益予想」なのは?」
楽天証券HP「ESG投資に試練。株式市場で化石燃料・武器関連株が上昇」
*7)グリーンピース「【解説】なぜ、2030年までにCO2を60%以上削減しなければならないのか」(https://www.greenpeace.org/japan/campaigns/story/2022/05/27/57279/)
参考
明日香壽川(2021)『グリーンニューディール』岩波書店
奥島真一郎(2017)「「エネルギー貧困」・「エネルギー脆弱性」・「エネルギー正義」」『科学』岩波書店
斎藤幸平(2020)『人新世の資本論』集英社新書
森川潤(2021)『グリーン・ジャイアント』文春新書
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