2023年9月14日、私たちFFF仙台は、ライフライン無償化プロジェクト(フードバンク仙台×仙台POSSE 共同事業)と共同で、東北電力株式会社に対して、電気料金の値上げに関する公開質問状を提出しました。
今回の東北電力への公開質問状では、エネルギー貧困の現状をどう捉えているのかといったことから、値上げの理由などについて質問しています。
この質問状に対する東北電力からの回答が届きましたので、
回答に対する私たちの意見とともに公開します。
東北電力からの回答を受けて
今回の回答内容は、これまでに東北電力が公開している内容・主張の繰り返しがほとんどでした。
①エネルギー貧困の実態についてはコメントなし
私たちはエネルギー貧困の実態を質問状にて詳述しましたが、東北電力はその実態についてはコメントをせず、電気代の値下げについては「何とも申し上げることができない」というゼロ回答でした。
②電気料金の値下げよりも約75億円の株主配当
株主配当についての回答からも、電気を利用する生活者を軽視した態度が現れています。
東北電力は、今年度の中間配当を一株5円、期末配当を一株10円(※1)としており、2023年度の株主配当の総額は、7,543,238,775円に上ります。この約75億円の配当の約3割が、投資信託会社や銀行といった大企業に配当されます(※2)。
東北電力は東北地方における電力市場をほぼ独占しており、電気がライフラインである以上電気が売れなくなることはありえません。このような電力事業の公共性から、電気料金の値上げには政府への申請が必要とされる一方、経営の持続性は保証されます。
株主配当は、市場競争の中で、出資した企業がつぶれるかもしれないリスクを株主が負うことへの「配当」であるはずです。
電気料金の値上げに苦しむ生活者をさしおいて、大企業の機関投資家への配当を約束する東北電力の態度には、「多様なステークホルダー」よりも「株主」を優先する姿勢が現れているのではないでしょうか。
(株式の状況|東北電力 (tohoku-epco.co.jp)より)
③これまでと変わらない原子力発電・火力発電に対する見解
東北電力は私たちが参照した環境エネルギー政策研究所(ISEP)などの試算には触れずに「日本はエネルギー資源に乏しい」(※3)という前提に立って回答をしています。
原発についてこれまでと同様に「燃料費の低減などの経済効率性、安定供給やCO2削減に寄与すると評価して、地域の皆さまの理解を得ながら再稼働を目指す」と具体的な数値を一つも挙げずに主張していますが、事実認識に誤りがあります。
東北電力は発電していない原発の維持だけで毎年約1000億円ものコストをかけています(※4)が、再稼働の試算では維持費は含まれていません。つまり「原発を維持するが再稼働はしない」場合の費用と「原発を再稼働する」場合の費用の比較になっています。さらに再稼働のため追加で必要になる約440億円/年を加えると(※5)、たとえ十分に発電したとしても電源調達費用の削減を上回り、必ずしも経済的に効率的だと言えません。
(東北電力(2023)「査定方針に基づく補正結果について」)
加えて、事故、トラブル、点検、裁判、自然災害などで停止することの多い不安定な供給(※6)。原発のせいで再エネ導入が遅れCO2削減が停滞、ライフサイクル全体では大量のCO2を排出すること(※7)。未だに処分の目途が立たず数万年単位で管理しなくてはならない核のゴミ。ウランの採掘や発電所の清掃・点検のために放射性物質を扱わなければならず、最も放射線被曝を被る「被ばく労働」を温存します(※8)。
火力発電についても、回答の中で今後も継続していく方針を示していますが、海外から化石燃料を輸入することで海外の情勢にエネルギー価格が振り回されることの根本的な解決にはなりません。さらに、2023年の夏は世界・国内各地で、記録的な猛暑が観測され、気候危機の影響は年々深刻化しているなかでの火力の維持、増設は非常に問題です。
今後について
公開質問状への回答では、「安心してライフラインである電力を使える」という公益を軽視している態度が確認されました。回答では新たな情報は明かされず、電力会社への疑問は尽きません。私たちは今後も「エネルギー貧困」でひとりも命を落とさないように活動を続けます。
電気料金や電力システムについて、普通に生きているだけでは分からないことがほとんどです。私たちは電気なしには生きていくことができないにも関わらず、私たちの知らないところで発電方法が決められ、株主配当がされています。
私たちは未だ独占が続く電力市場、そこで利益を上げる電力会社の問題について、調査を進めていきます。
※3環境省が2020年に提出した報告書では、再生可能エネルギーの導入ポテンシャルは、1060-2580twHと評価されています。r01_whole.pdf (env.go.jp) S-2
一方経産省は、日本の電力消費量は、今後電気自動車の普及・電化などで増加していくことを勘案しても、2050年時点で約1300-1500twH#程度であると推定しています。再生可能エネルギー100%でも、私たちのエネルギー需要を十分に満たすことは可能です。
東北地方に限っても、再生可能エネルギーの導入ポテンシャルは約33108万kWとされています。(東北電力全体の発電容量が約1669万kW)
※4 財務+一般管理費配分後費用(毎年の有価証券報告書より)
※5 東北電力(2023)「査定方針に基づく補正結果について」p7
※6 ゼロから学ぶ原発問題 (greenpeace.org) ※7 CCNE_GX_QandA2023.pdf (ccnejapan.com) p22,p23,p31
※8 原発についてのFFF仙台の過去の発信はこちらのシリーズをご覧ください
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